今日は念願の静岡県牧之原市に行政視察に行ってきました。牧之原市は 「市民参加と協働」を掲げ住民が市政に積極的に参加するしくみを推進。有識者やコンサルではなく住民自身が議事進行役となって意見交換。500人以上の市民が関わって完成した「第2次総合計画」(2015年~2018年)は国が求めた「地方版総合戦略」の条件をクリアし、「総合戦略」を国に提出し全国のモデルになった自治体です。平成32年に施行予定の総合計画策定を控えている流山市の参考としたいので視察先として選定しました。
総合計画は、まず市内団体との意見交換会を合計17回開催し、産業・健康福祉・教育分野・生活基盤・行政経営・女性・企業従業員・金融機関の8分野から、173団体、513人もの関係者が参加、そして産官学勤労言の委員による市民会議「NEXTまきのはら」を5回開催して基本構想案を作成されました。これが形ばかりの市民参加ではなく、ワークショップ形式で行われたのこと。図は策定手法です。
総合計画というのは将来の街づくりの大きな方向性を決定する重要なものですが、策定プロセスのDVDを見ると参加された市民の方々がとっても楽しそうで、こりゃいい計画が出来るな、と直感的に感じるものがありました。
しかしそれを実現するには相当なご苦労があったと推察されます。徹底的な市民主導を実現するために、職員の方が様々な工夫をされていて感銘を受けました。
印象的な質疑を一部共有しますね。一言一言が重い!
Q. このような手法で総合計画を策定した目的は何か。
A. 市民参加と協働は全く違う概念。市民参加は市が主体だが、協働は市民が主体である。団体自治と住民自治(地域で出来ることは自分たちでやる)を両方進めていきたい、これが目的である。
Q.ワークショップはどのようにすすめたか。
A.市の現状を説明した上で、気軽に楽しく、でも真剣に考えることをモットーに、①住みたい将来街の姿②自分たちに何ができるのかのアイディア出しを行った。
500人以上が参加して、中身の濃い議論をつみあげ、市民討議資料として具体的な市民案をまとめた。
参加は女性4割を目標とした。若者が住みたい街を確認するため高校生にも意見を聞いた。参加して楽しいという人、参加を人に進めたいというのが沢山いた。
ワークショップのルールは①自分ばかり話にしない、②否定しない、③楽しさを大切にする、である。
Q.ワークショップの開催時間帯はいつが多いのか。
A.まちまち。夜開催が多かった。一方この時間帯では、高校生&主婦(夫)の参加は難しいため、企業のご協力を頂きSNSでも意見を頂く工夫をし、何らかの形で必ず意見を取り入れるような配慮をした。
Q. 4割女性にこだわった理由は?
A. 男女協働サロンが原点。自治体は多様な人が集まっている、それが市の縮図。市長の指示もあったが、元々それが自然な形だ。そもそも定住場所は女性が決めることが多い。住みたい街をつくりたいと考えるなら、そういう方々を入れていくのが地域経営を考えていく上で重要なプロセスデザインだ。
牧之原市の市民参画はワークショップを通じて実現されていきますが、これは牧之原市の「男女協働サロン」で採用され、実績があったということで発展してきたようです。男女協働サロンとは「男女協働」をテーマに、参加者が、個人で考えたり、グループ内の人と意見交換したりすることで、男女協働に対する個人個人の理解を深めるために、気軽に楽しく話し合うワークショップ、だそうです「こちら」。
余談ですが、牧之原市は男女共同ではなく、男女協働としていて、これは、「男性と女性が協力して、一人一人を大切にする心地よい社会をつくる! 」ということらしいです、素晴らしいですね。
Q. ワークショップへの参加が楽しい、人に参加をすすめたいという人が多いのは何故だと思うか。担当者のご意見を伺いたい
A. 楽しい&中身が濃いことを最も大切にしている。そうでなければ次では足を運んでくれない。地域には頼まれたから仕方なく参加する市民もいる。でも実はその人達こそ街づくりに参画してもらえるようになることが重要。最初はイヤイヤ参加したけど結構楽しいから、自分も積極的に参加してみるか!という気持ちになる。何に楽しさを感じるかは人それぞれだが、人の意見が聞けた&自分の意見が話せたという経験は楽しく、楽しいからこそ主体的になっていく。それをファシリテーションというスキルを使いながら動かしていく。聞いてばかりならだめ、聞く&話すをバランスよく、話し合いの中でプログラムしていく。ファシリテーションの重要なポイントである。
Q. 意見集約の工夫は行ったか。
A.各ワークショップで出た定性的な意見を必ず定量化(どんな意見がどんな立場の方からどの位出ているのかをまとめる)し共有するようにした。市民の意見は定性的なことが多いが、これを定量化して裏付けし、それを共有するという繰り返しを行った(より深い考察を促すという事を行った?)。やってみると、行政は、防災や産業の政策をメインに据えがちだが、市民は生活に密着した「子どもを育てやすい街」というのがメインだった。中にはそんなにお金はそんなに関わらない支援の要望もあり、新たな発見もあった。また数としては多い意見が重要度は低い場合もあるなどの発見もあった。
こういった運営を行うことで適正な合意形成が進み、最終的に市民2000人くらいの想いを市民討議資料としてまとめた。
この取り組み素晴らしいと思いました!!流山市でも是非トライしていただきたいです。というか私も分析してみたい。
Q.ワークショップを支える上でコンサルは入ったのか。
コンサルは入っていない、全て手作り。ワークショップで意見集約し、アウトプットを丁寧に文章に落とし込み、次回で共有するという地道な運営。意見集約に投票を使った時もあった。各部門の施設担当者と市民との対話を繰り返して作り上げる。子育て・産業などの専門テーマについては、各課担当者や研究者にアドバイスをして頂く場合はある。
Q.行政が方向性を示すべきという声は無かったのか。
A.行政職員はしがらみがあったり、知識があるゆえ、エッジが立った提案が上がってこない。地域住民は地域の専門家。市民が方向性を示すことに意味がある。
Q.市民主体でどの位の原案まで持っていけたのか。それが出来たポイントは何か。
A.3点ある。
1点目。審議会が、市民側の活動やご意見を認めてくださった。市民から上がってきた意見をベースに審議をし、結果をまた市民に返すというキャッチボール方式で進めてくださったのは大きい。
2点目、総合計画は3層構造(基本構造、基本計画、実施計画)。この作り方を知っている職員がいて、時間を費やして参加して出された市民の意見が、どこに反映されたのか(ビジョンにつながったのか、具体事業に反映したのか、計画に反映したのか等)しっかりまとめてあげないとだめ。
3点目、きちんと補完する。市民の関心が高い所ばかりだと政策に穴が出来る。専門家の先生のご意見を伺いながら穴があれば埋める作業をする必要がある。
総合計画は、市民の方々に関わっていただく最高の機会。まさに「人づくり」になるのではないか。
Q.市民案をつくるには、行政側は相当な情報提供を行ったのではないか。
今でこそファシリテーターという言葉は一般的になったが、平成20年頃は地域に出て行っても理解は無く「何でこんなことやるの?」と言われた。だからファシリテーターを知ってもらうという活動を地道に行った。具体的には自治会の役員の方にファシリテーター研修に出席してもらい、体験してもらうという活動だ。情報提供も重要だが、大切なのは情報共有。情報共有とは分かってもらうこと。グラフィックなどを駆使して分かりやすく説明しないと伝わらない。
ファシリテーターも養成する研修だけやってもダメで実践の場を用意してあげないと腕が上がらない。そのために研修会を組むような動きもする。
Q.市民協働をさらに推進するためには?
A.市民側の協働に対する正しい理解が必須。市民は行政の上にいる、行政は使えているが前提。しかし、街づくりを考えるとなると、上下関係ではなくパートナーでなければならない。姿勢は重要。
対話の文化を徹底的に根ざしていく。それが普通になればいい。対話の先というのは多くの可能性が開けている、対話の文化が住民主導で広がっていくのが夢。
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