「その1」では、局所的な人口急増に伴って発生する問題、当初の計画と現状、そして土地区画整理事業を進めてきた市が急激な人口増加を抑制できない理由(推測)について共有しました。この問題に私も解が見つかっているわけではありませんが、市民の皆様と考えていきたいと思っています。それでは続きを書きます。
【マンション急増に対して何ができるか】
戸数が多いマンションが急増すれば、人口が急増し保育園や幼稚園、学童や小学校などの社会インフラが間に合わなくなるかも??というのは用意に想像できます。
しかし、日本で都市の成長管理をするのは『ほぼ無理』とも言われています。
アメリカなどは都市計画に基づき大規模な開発によって街の環境が悪化しないよう規制できますが、日本では限られた方法しかないのです「こちら」。
でも「できない」と決めつけたら出来ないので・・と色々調べていたら頑張った自治体がありました。江東区です。
【マンション問題に取り組む行政の姿勢を明確にした自治体、江東区の取組を参考にできないか?】
江東区は、2002年に「マンション等建設指導要綱」を制定。増加する児童の受入れが困難な小学校の区域内でマンション開発を行う事業者に対し「公共施設整備協力金」の拠出や、計画の延期・中止、用途変更など求めたそうです。2003年から要綱を条例に格上げし、教室不足などを理由に2007年末までの時限措置として、マンション用地取得の際の事前協議義務付けや、条例に従わない場合、事業者への勧告、事業者名の公表なども定めました。
もちろん、建設を禁止するなど法に反することはできないでしょうが、規制地区を明確にし条例化することで「マンション問題に取り組む行政の姿勢を明確に」したのだと思います。
2007年には、この条例を失効させ規制地区を廃止しますが、「条例でマンションの建設を一時待ってもらう一方で、学校整備計画を進めることが出来、児童受入れの見込みが立った、乱開発に歯止めをかけられた」と区は総括しています。
流山市も子どもの急増により学校がパンクしそうな状況ですので、現状を開示した上で受け入れ困難な地域を時限的に設定するなど、江東区と同様の取組を行えないか質問しました。
【残念ながら・・】
いい答弁はありませんでした。
理由は下記。
・流山おおたかの森の商業・近隣商業における(本年8月見現在)の土地利用の割合は、商業施設が32%、商業施設併用の集合住宅が8%、集合住宅が12%、まだ土地利用がされていない未利用地が48%で、居住系用途の土地利用が突出している数値とはなっていないという認識。
➡しかし、仮に48%の未利用地(4.8ヘクタール、容積率300%)がマンション建設となった場合、1800戸のマンションが建設されることになります。こうなった場合、完全にパンクです。
・流山市は平成8年まで流山市公共公益施設等負担基準要綱を定め、事業者にマンションや戸建住宅の建設に際しては負担金の協力をお願いしていましたが、国からの指導で取りやめた経緯がある。
➡つまり怒られちゃったんですね。
市としては、国に指導を受けてしまった経験もあるし、自由経済を前提としている日本で、自治体で強すぎる制限を加えるのは妥当でないと判断したのでしょう。理解出来なくもないのですが、こんな強い制限が必要だと主張する位、切迫した状況だということも分かっていただきたいと思います。
その他、商業エリアに賑わいの創出と回遊性を誘導できるよう三鷹市の商業地域の都市計画制限の例も紹介しましたが、下記の対応で留めるという回答でした。
・土地所有者様の意見を伺いながら街並み指針を策定しているおり、建築段階から建築事業者と協議の場を設けることで建物物の低層部にはレストランやショップなどの賑わい創出に寄与するような用途の導入について誘導していく。
➡でも土地所有者にインセンティブが無いのに実現するのか、、、非常に不安です。連続して店が連なって存在しなければ歩いて楽しい街(ウィンドウショッピングができる街)にはならないのです。それにはほぼ全てのマンション低層階が店舗である必要があるのではないでしょうか。
【小まめに現状分析を行い、徹底的に情報公開を】
さて、ではどうするか。。。正直悩んでいます。。。
実は流山市は、良質な住環境構築を目指して都市計画を相当頑張ってきた自治体なのですが、選ばれすぎてしまってパンクしそう(想定外)ということなので、当面は、学校や保育園、学童などの充足状況など、良い所の発信ばかりではなく急速な人口増に社会インフラやきめ細やかな福祉が追いつかない点も含めて情報公開するしかないと思っています。
さらに、3年後の児童の人口推計しか算出していないようですが(学校増設の補助金取得に必要な資料作成としてしか算出していない)市の全体政策担当部隊がこれらを吸い上げ、もっと長いスパンで低成長、中成長、急成長の3パターン位の推計をつくって公開、さらにその予実を四半期毎位に更新、発信する位の気概が欲しいと思います。
引き続き住民誘致を進めるなら、これから転入される方にも転入された方にも誠実でなければならない。
今の急増が想定外というのであれば計画に対するトレースを小刻みに実施するしかありません。そして一番重要なことは、子育て環境の整備は覚悟を決めて取組む必要があるということです。
引き続き突っ込んでいきますし、都市の現状や課題については、私も手を動かして発信していきます。
【なぜ、都市の成長管理が難しいのか】
文中、日本は都市の成長管理が難しいと書きましたが少し補足します。
※中々簡単に説明するのが難しい(TT)
日本の都市の成長管理が難しいのは、日本の都市計画の制度が貧弱で、自治体が開発に対して指導出来ることが極めて限られているからです。
例えばアメリカでは、大規模商業施設は商業系用途地域のみで立地可能だったり(ゾーニング規制)、大規模商業施設の規模を制限したり(リテール・サイズ・キャップ制)、事前影響調査(CIR)で事業者負担でアセスメントを義務づけ等、開発には日本と比にならない厳しい制度があります(その他の国もしかりです)。
出典)国土交通省 http://www.mlit.go.jp/singikai/infra/toushin/images/04/038.pdf
これらは、産業革命以降、農村から都市部への人口流動が加速し都市の環境が悪化、高い人口密度、住居と工場の混在、スラムの拡大など、様々な問題が発生したことから、良質な街づくりをエリア一体で行うために発展してきた制度(都市計画制度)と言われています。
一方日本は、憲法で財産権が保護されており所有者の権利が強く、開発が個別最適側(自分の開発地だけ良ければいい)に流れやすい。さらに住宅を建設すると固定資産税が1/6になるので、開発がマンションに流れやすいのです。流山市に住みたい方が多ければマンションデベロッパーはバンバン建設してきます。これからは人口減少社会ですから売れるときに売れるだけ建てたい、営利企業としてはあたり前のことですが、このシステムが加速すると人口が急増してしまいます。
マンションのような大規模開発が自由経済の上にあるので都市の成長管理が難しいのです。
実は、そういった中でも流山市は相当頑張ってきた自治体でもあるのですが、それは別の機会にまとめたいと思います。
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