~学童保育が子どもの居場所であるために~ シンポジウムに参加

2018年1月13日 日弁連が主催する学童保育のシンポジウム「こちら」に行ってきました。

学童保育の多様性と、ニーズ急増の現況、
学童保育が担える役割・あるべき姿、
作業療法士との連携事例などの報告がありました。
 
全ては難しいのですが、印象に残った点を中心に抜粋して紹介いたします。

学童保育は、60年代から保護者からのボランティアから始まった歴史もあるため、今でも父母会などで運営されている自治体もあるほど、運営方法が多様です。
※流山市は平成24年から指定管理者制度に移行しています。

(施設や資格などの)品質基準の歴史も浅く、公的な補助も潤沢ではないため、プレハブのような簡素な施設であったり、自治体によっては児童密度が高い学童があったりと、保育園と比較すると質が追いついていない状況も報告されました。
 
今後の学童の目指すべき姿として、下浦忠治先生から「支援員が求められる関わり」という主旨の「子どもや親にとって夢のような」説明がありましたが、現実とのギャップも感じました

約7割の支援員の年収は150万円以下(全国学童保育連絡協議会 2014年実態調査)です。ありたい姿を実現するには、あまりにも低い支援員の処遇だと感じます。

以下、要約を記します。

支援員が求められる関わりとは?

①まずは「帰りたいところ」となるように
・6,7時まで我慢しながら過ごしているようでは切ない。「楽しかったね」と共感しあえる子ども同士の関係を創っていくことが求められる。生活の目当て(遊びと仲間)が見つけられるようサポートし、所属意識・仲間意識が持てるよう支援する。
・家庭で色々あっても、明日を楽しみにできる放課後づくりを目指す。
・子どもの「やりたい!」を保証する、「行きたくない」と思っている子はいないか日々検証を。
 
②「明日も遊ぼうね」と言える関係を
・放課後児童クラブは子ども達に課題に向かわせるという生活スタイルではない。子ども達に「レール」を敷いて、それに乗れない子が嫌になったり辞めていくことがあってはならない。
・子どもは遊びを通じて、自他の感情のぶつかり合いの中で折り合いをつけていく、人と関わる力、人に認められ、あてにされ、受け入れられているという実感が自己肯定感・有用感につながる。この力が育って大勢の中で生きていける。

③子どもの「異変」に気づく・困難に気付く
・いつも声をかけてくれて、思いを聴いてくれる、つらさにも気づいてくれる、そんな心の拠り所となる支援員の存在が欠かせない。
・とりわけ配慮を必要とする子どもに対してはチームでの振り返りを欠かさない。

④「困っている状況」に手を差し出す
・発達障害の子に対してはアセスメント力(集団の中で何に困り、何をしている時が楽しそうかの見極め)が求められる。
・セルフコントロールは受け止められてこそ育つ。叱るより褒めるを意識して成功体験を増やす。

⑤気持ちを受け止める関わりを大事に
・家庭で色々あったとしても支援員の関わり次第で不安感・孤立感を癒せる。情緒の安定と元気回復の空間になりうる
・親にはなれないが、親に代わって、愛情を注ぐことはできる。分かってくれる人がいてこそ安心し、頑張ることができ、変わっていける。

⑥伝え合うことで「共育てのパートナー」に
・支援員は保護者に対し、共育てのパートナーとして悩みや思いを出せる信頼と協働の関係を築いていく。
・関わり合って育ちあっている姿と支援員の眼差しを保護者に伝え、保護者が安心して働き続けることができるように努める。

⑦保護者をつなぐ・孤立を防ぐ
・声を掛け合う関係、交流の場での協働をサポートする。そこでの学びが親としての成長となり、孤立の子育てを防ぐ。支え合う人間関係を目指して、親子で交流できる機会を創っていく。
・ゆとりが無くて保護者同士の輪の中に入れなくても、支援員とのつながりがあれば孤立は防げる。


また現場の取組として、4人のきょうだいがいる実質シングル家庭で育つ小学4年生の女の子に、どんな風に寄り添い・どのように真の心の声を聞いているのか、某自治体の学童の支援員から紹介されました。

心の声を聞くための寄り添いと子どもの権利

小学4年生と言えば子どもから大人へと成長する時期。

話しかければ「うざっ・きもっ」などと言って、話を聞いてくれないことも多々ある一方で、
下の子(3歳)の子育ても手伝っていて、それが疲れちゃうんだよと愚痴をこぼすことも。
疲れて学童の床でゴロンとして眠りこけてしまう時は、支援員がそっと毛布を掛けてあげるそうです。

ある日、学童のみんなが楽しみにしている「お泊り会」の企画を考えていた時、
忙しくて会話をする余裕がない彼女に「お泊り会で何をしたい?」と支援員が手紙を書きます。

「なにこれ?私返事なんて書かないよー」というので
「そんなこと言わないで書いてよー^^時間のある時でいいから!」とお願いする支援員。

しばらくすると「ほら、書いてやったよー」とポイっと投げられた手紙には

「ゆっくりお泊り」

と書かれていたそうです。

まだママの膝を独占したい年頃なのに弟達のために我慢して、
思い切り遊びたい年頃なのに弟たちの世話をする。
そういう彼女の姿が日々の関わりを通じて透けて見えるからこそ、
この手紙に書いてある彼女の心の願いが伝わってきたし、
学童保育という場が、子どもの権利条約を守っていく事の大切さを確認したそうです。

以下、学童の壁に貼られている子どもの権利条約。

子どもはやっぱり遊ばなくっちゃ
子どもは休んでのんびりして、仲間とあそぶ事が大事
ねんどいじり
おはなしづくり
すきな歌を歌う
芸術も楽しめる
子どもの権利条約

今回のシンポジウムでは、
毎日の寄り添いにより子どもの真の声が見えてくること、
その寄り添いはプロフェッショナルなスキルであること、
プロフェッショナルなスキルを要求するにはあまりにも処遇が低いこと、
一方で、子どもの権利のど真ん中に学童保育があることを再確認した次第です。

私は、このギャップを埋める活動を行っていきます。

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